〜バミューダ海戦に関する言い訳〜

ムービーをご覧になった人は分かると思いますが、バミューダ海戦は一言で言うと「悪口を入力して敵を倒す」というコンセプトのゲームでした。
別に反社会的なゲームを作りたかったのではなく、基になったアイデアがあって、それが『ホモ・ルーデンス』(ホイジンガ著)という、遊びを文化人類学的に検証した本の中の記述です。この中で「悪口合戦」という風習が、遊びの原初的な形態として古代から複数の文明において見られたということが記されています。
「悪口合戦」が遊びだというのなら「悪口を入力する」というコンセプトのゲームも成立するに違いない、という飛躍しまくりの短絡思考からバミューダ海戦は作られました。
(余談ですがホイジンガによれば、この悪口合戦に法律的、倫理的な観点を後から付け加えたものが裁判制度であり、したがって裁判も遊びを原点としているということが書かれています。某C社の「逆転裁判」を企画した人はきっと『ホモ・ルーデンス』を読んでいたに違いないと勝手に推測したりもしています。)

「市販作品では実現できない種類の楽しさを提供する」というのがプリムラソフトの一つの理念です。そういう意味では、ゲーム会社で提案しようものなら速攻却下されそうなこの悪口ゲームという企画は、方向性としてはアリだったと思います。またバミューダ海戦は、私にとって初の3D作品であり、技術的にはTWBと比べて大きな進歩を遂げています。
しかし実際にやってみると、ゲームの根幹である「キーボードで悪口を入力する」という作業に面白みがないということにすぐ気付かされました。テンポが悪く爽快感のかけらもない。また、バミューダ海戦はデータベースに登録された約400個の悪口を受け付けることができたのですが、結局同じ悪口しか浮かばないのですぐ入力に詰まってしまう。悪口データベースの中身を知っているはずの作者ですらそうなのだから、一般のプレイヤーがテンポよく悪口を打ち込んでいけるはずがないことも明白です。
TWBの時は開発度5%くらいの時点で「これは絶対凄いゲームになる」という確信をすでに抱くことができていたんですが、バミューダ海戦ではついに一度もその予感すら抱くことができませんでした。
それでもバミューダ海戦をプレイしてみたいという奇特な方がもしかしたらいるかもしれませんが、面白くないと分かっているゲームを出すわけには行かないのですみません。ただ、せっかく使った3D技術がもったいないという思いもあるので、悪口入力というシステムを取っ払った普通のアクションゲームとして「バミューダ海戦・改」をいつか出そうと思っています。